第二回新制作派展に出された、あの『裸婦』だ。それが、見事に出来上がってた。そういうわけなんだ。
天窓から背中にさし込む、あったかい光。…。光のぬくもりまで感じるね。きらびやかなレース、ヨロイ窓の逆光。小磯さんが、構図をひきしめるときよく使うヴアーミリオン系オレンジも、唇とルージュと頬のほてり、チョロッとのぞいた椅子カバー、踊り子の衣装…。どこ見ても一分の狂いもない。それもねぇサッサッサァーッと、何のためらいもなく一気かせいに描いてる。ボク参っちゃうな。ああいう絵にはもう、ただ脱帽ですよ。
あの傑作を、半日でやってのけるなんて。あの人は、天才です。ホント。
この話は、昭和62(1987)年1月の、『小磯良平展』での小松さんの美術講演をお聞きの方は、ご記憶のことであろう。