益喜を語る

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「竹中郁氏像」に込められた人間愛

兵庫近美所蔵の、ぼう大な数の小磯さんの素描のなかの一枚に、『竹中郁氏像』というのがある。

このデッサンの右下隅には、「1941−1951」と、アラビア数字で二つの年号が記され、ダッシュで結ばれている。この、二つの年号を結んだ、小磯良平さんと竹中郁さんとの、心温まる友情の物語がある。

たしかあれは、私が兵庫近美にいたとき開催された『小磯良平展』が、全国巡回を終えた後と記憶するから、昭和62(1987)年の秋口のことだったと思う。小磯さんが、金井館長を訪問されたことがあった。以下は、当時館長の秘書役(無任所館長補佐の職務のうち)でもあった私が、小磯さんを館長室へ案内、急用があって外出中の増田館次長の帰りを待つまでの間、陪席してじかに拝聴した、お二方の歓談中に出てきた話である。

この話は、長い会話の合間を縫って、聞きとどめたものなので、実録テープ風には再現出来ないことを、お許しいただきたい。