<<解説>>
トア・ホテル華かなりし頃である。左手に白地に赤い字でTELとみえるのは、トア・ホテルの看板の一部だ。
神戸の山手はまだ車も少なく、家々の前には樹が茂っていて、壮快だった。しかし、画面奥手に当る葺合区の方の空は、製胴所ができたため、いつもピンク色にけむっていた。公害はすでにこの頃から始まっていたのだろうか、春先から夏にかけては六甲山も見えなくなるほどひどかったのを覚えている。
街路を拡げるため、しばしば塀を家に近づけていった。道路のアスファルトは何回もぬり加えられ、かなたに見えるレンガ塀の石の土台などは見えなくなってしまった。
この絵は異人館の群れ、集っている感じをかきたくて、こういう構図をとったが、今はビルが間にたくさん建ってしまい、こうした絵はもうかくことができない。