<<解説>>
山本通り3丁目、トア・ロードの山手のはしにあるオランダ人貿易商のアブラハム氏の邸宅である。
建物の灰色、窓が黄緑色で実に美しく調和していた。が、後に日本人が住んでからは、壁は白に、よろい窓はセピアとインディアン・レッドとの中間色と、常識的な色にぬりつぶしてしまった。残念な思いをした。色の神経のつかい方が、やはり違う。
絵の調子は、この灰色と黄緑色のくすんだトーンが出るように全体を合わせた。曇りの日の、なお逆光の感じを選んだのもそのためだ。
門柱の上の、丸くロクロでくってつくった台柱は、昔ガラスの屋根を支えていた。雨の日、門の所で傘を閉じた人がぬれないようにという心づかいだ。
塀のレンガはオランダ積みだ。フランス積みと似ているが、ヘリにコバを一列とってあるところが違う。これも道路の拡張でつぶれてしまい、家も数年前改築となった。