<<解説>>
終戦直後、神戸にもどってぼう然とした頃の絵だ。山の手の、ロシア領事館の焼け跡から神戸一帯を港まで、見わたす気持ちで描いた風景である。
(港を見渡した絵は、僕の多くの作品の中でも3枚だけか、と覚えている)
家としては、舶来レンガの赤いエントツの残っているのがうれしく、焼け跡の多い中で特に色よく感じたものだ。
しかし絵の具は戦争中の配給のものだし、つやニスもひどいもので、すっかり油ヤケをおこし変色してしまっている。
すさんだ時代だったが、(画面中央の左手に)フランス国旗が昔ながらに健在だったのに、心がはずんだものであった。
(余談だが、港の船も今のタンカー船とは全く違い、高い煙突から黒い煙をなびかせているのに注目されたい。)