<<解説>>
北野町にある、銀行家の邸宅である。
犬の好きな人で、ダックスフンドを10匹ほどもかっていていつも吠える。それで、このまま描き続けるのも悪いからと、あいさつに行くと以後主人が犬を「犬だまれ!」と日本語でしかってくれる。犬はまるで行儀の良い子供のように言いつけを守るのがおかしかった。
楠の木が初夏に芽ばえ美しかったが、家はいたんだままで、途中で鎧窓がはずれたりした。
こうした家の保存を、何とか望みたいものなのだが。
僕の絵に夏のが多いのは、秋の展覧会が終わるとすぐ次の制作にかかり、夏に仕上げることも影響しているかもしれない。
この時期、絵は転換期に入り始め、極度の写実を試みるようになってきた。
“銀行家なのに、オーバーラインとは、これいかに………”