<<解説>>
異人館が急速に減り始めた頃の絵である。明治の本造りの異人館は、木材が腐蝕したり壊れ始めた。しかし戦争も近く、住んでいる人にゆとりがないためか、手入れのないものが多かった。
僕としては、うねうねとゆがんだ家やコンクリーのカベがおもしろく、ガッチリとした所も炉事やけしたところが生活感があり、おもしろかったのだ。
が、柳の木のせいか、何だかうらぶれた風ぜいのせいか、アトリエの隅に睡っていた絵である。
そういえば、このあたりはおもしろい所で住んでいた人々はもと貴族の白系ロシアの人々だったが、姉弟があらそったり、ロシアの新興教宗教に入ったりと、異人さんとしても変わっていた。
絵はめだたないが、手法はさまざまなグラシュを使ったり、マチエールにこったものである。