<<解説>>
異人館の並んだ山本通り2丁目の風景である。旧・小磯良平氏邸の近くの、白く明るい家だった。
ヘイのレンガ積みから見ると、もとはフランス人が住んでいたのだろう。(なぜなら、異人館は住む人がそれぞれ自国の形式をつかって日本人大工に建てさせたからである。)この頃住んでいたのは、インド人であった。
この家は中央にある白い突きでた部屋が変わっていて、濃いグリーンのよろい窓との対照が印象的だった。奥の、緑の窓の一つある低い部屋は女中部屋だ。ふつう女中部屋は離して建てているものだが、この家は変わっていた。
戦争はまだおもかげもない、明るい頃だ。
絵もようやく暗いふんいきからぬけ出した。それは物の調子がわかってきたからだ。自然のもつ色、自然のもつ明るさが描けだしたのだ。
「英三番館」の頃から「桃色の家」まで、その後、僕の絵は何回も変遷を重ねる。この絵は、その一つの時代を確立するものとなった。