<<解説>>
居留地江戸町は倉庫が多く、3〜4階だてのレンガ造りが続いていた。白いビルは建てられたばかりのものである。
中央、道の右手の建物は、倉庫の4階を改築して窓を広げ、銅板の製版所になっていたので、昼間でもジリジリとアーク灯の光がみえることがあった。
この絵をかいた頃、僕は北支・大連から帰ってきたばかりだった。大連の建物の重厚さをかくには、やはり厚ぬりにしなければ、と思ったものだ。それが、この絵にも影響している。マチエールは厚ぬりだ。
道のつきあたりにある塔も好きで、構図としても良く、力をこめて描いた。建物も山も道も空も、一つとしていいかげんではなく、よくできたと思う。
余談だが、製作中、赤レンガの建物から、僕と同じ高知出身の竹内氏が出てきて、「オマン高知の小松じゃないかょ、たまるか、アッポロッケ!(おどろいた)」という。モダンな居留地で、何十年ぶりかに“アッポロケ”などと聞き、おもしろくもあり、うれしかった。
(左側の一部以外、全部戦災消失。)