<<解説>>
商館と舶来レンガ積みの倉庫である。
古ぼけた三つの門柱のリズム感と、長い間風雨にさらされた門扉のトーンがおもしろいレンガは舶来といっても、一番美しい装飾用のものではなく、その色に苦心した。
ガス燈はサオで火をともすのだが、この頃はもう使われていない。
時はまさに支那事変の頃。香港や支那への輸入はピタッと止まってしまい、商館員は帰国し、“TO LET…”の札がかけられた。
まだ新制作派の会員になるかならぬか、という頃の作品である。毎朝6時から9時までこの絵をかき、朝めしを食べに一度帰り、それから「英三番館」をかきに行く、という日が3年間続いた。おかげで早朝に来る牛乳屋さんと親しくなり、毎朝1本ごちそうになったのがなつかしい。
その頃はまだ技術が幼稚だったので、こんなに長い間かかったのだろうか、絵には愛情が十分に出ていると思う。