9.近藤商店の倉庫(取毀し)
これは元居留地東町角にあった。白い壁におもしろい窓がついていて、色の調和と形がうまくマッチして、私の画心をそそった建物だ。
塀と右の事務所はコンクリートタタキ塗り壁で、黒っぽい壁面でできていたので、私の好きだっ白い倉庫をいっそう美しく引き立てていた。思い出してみると、なんだかウイスキーの輸入会社のようだったと記憶している。
戦災からも守られて、終戦後しばらくはそのまま建物が残っていたことを覚えている。
この白い倉庫はおもしろい凝(こ)った窓がついていて、白い壁が歴史のようにこれを受けていろいろの変化を見せてくれて、とても楽しかった。この近藤商店の真上はシーメンスインスチチュートで、この白い倉庫は右手事務所の塀にくっついていた。
近藤商店が加納町二丁目に引越してしまった後、この倉庫は大きな、つまらない箱型の倉庫に変わってしまったであろうと想像し、胸がいたくなるのである。