1.ジャパン・クロニクル(焼失)
神戸浪花町の北端にあって、現在の朝日新聞社の東隣りであった。この建物の左側の倉庫は現在も残っている。
この家は私のとても好きな家の一つで、疲れるとこの入口と窓との間の壁にもたれて、ぼんやりと街を眺めたものだった。木造モルタル張りで、表に現われている柱や梁はライトレッドで塗られていて、壁は青灰色、とても異人好みの色の組み合わせであった。
この新聞社ははじめクロニクルと云っていた。私が絵を描いた一九三五年頃には、ジャパン・クロニクルと云われていた。
太平洋戦争がはじまっても、まだしばらくは発行されていた。ある新聞記者などは、よくがんばるね、と言って感心していたことを覚えている。やがて戦争がはげしくなり、神戸大空襲によってこの建物も焼失してしまった。