2.磯上通のオランダ商館(焼失)
これは太平洋戦争前の風景である。一九三七年ころ、外人墓地(現在のものではない)の北東にあった煉亙造りで、おそらく日本に仕事に来て成功し、故郷忘れがたくて作ったであろうと思われるほど、オランダ風の古建築の感じがよく出ていて、これが神戸と云えるだろうかと思われるほど、異国情緒に溢れていたものだった。
下水道工事が行われていて、おちついて描けなかったことを覚えている。
オランダ人はオランダ人同士が近所に固まって、事務所兼住宅の家があったものだ。いつも忙しそうに貿易品を倉から出し入れしていて、よくもこんなに忙しくやられるものだと、感心して見ていたものだった。狭い道を馬方さんが馬力車を引いて荷物を港の船に運び、船からは輸入された商品がこのオランダ人の倉庫に運び入れられているのを、よく見かけたものだった。
この建物は、戦災のために跡方もなくなってしまった。