神戸異人館今昔

4.江戸町のヴァイブルハウス(焼失)

江戸町のヴァイブルハウス

この画は北町と江戸町の交差点で、手前に出ると滝道に出る、今はバス道になっている通りである。

この小さな一階の煉瓦建ちがヴァイブルハウスであった。この店に人の出入りするのを見たこともなかった。これでたちゆくクリスト教とは、ずいぶん根深いものがあるにちがいないと思ったことだった。この建物は小さかったが、大きな二メートルもあるような鎧窓(よろいまど)がついていて、それが舶来煉瓦の冴(さ)えた赤茶色とよくマッチしていてとても美しかった。

このビルの下隣り、すなわち左側に五階建煉瓦作りの大倉庫兼事務所のあるストロング商会があり、その左が是則運送店、次が土佐の紙会社、マル一紙業KKだった。それは高い防火壁をつけた二階建だった。その下が赤煉瓦四階建の堂々たる倉庫で、とても楽しいムードをかもし出していた。

私の好きな江戸町は、見事な大煉瓦建の大倉庫街であって、絵になりやすくたのしい雰囲気(ふんいき)の街だったが、この絵はその街の入口であった。