神戸異人館今昔

3.神戸元町一丁目山側角(焼失)

神戸元町一丁目山側角

この異人館も今はなし。この街は今の大丸百貨店の西側を海岸の方へ下ったところの西側の角である。

この画を描いたころは、都会では電車が唯一の交通機関だった。黄緑と深緑の二色の、私のもっとも好きな色をしたスマートな電車が走っていた。

さて、この中央の三角帽子をもった入口のある家は、キャフェー・レストランで「ダイヤモンド」と言っていた。ホステスなどというシャレたことばはなく、女給さんと言っていたころである。当時としては鎧窓(よろいまど)をもった、相当シャレた人の経営していたものであろう。

この右隣は一階が両替屋で、「EXCHANGE」などという英文字がとてもスマートだった。二階は旅館で、そのころは不幸な移民のための旅館だったらしい。この隣に幅一メートル足らずの小さな路地があり、ここを抜けると急に街が広がって、うまい食料や料理店のあった南京町になった。

これらの建物も戦災であと形もなく焼き払われてしまった。