神戸異人館今昔

29.風見鶏のある家(現存、一部建替)

風見鶏のある家

北野神社の東隣りにある。ドイツ人の建築家テラランデ氏設計になるもの。氏は風見鶏をつけることが好きで、まだ他所にもあるということを坂本勝比古氏(建築研究家)から聞いた。

この風見鶏というのは、二十年も前には風の向きを指すためにこの鶏がぐるぐると回転するようにできていて、風の強い夜この建物の前を通るとギイギイと異様な音がしていたことを思い出す。今はすっかり錆(さ)びついて回転しなくなった。鶏の形がとても造型的でおもしろい。

屋根はタイル張りで、タイルの斜線がとても情緒をかもし出している。角々はライトレッドに塗られており、今はそのライトレッドが色褪(あ)せてかえって強い赤となってとても美しい。

新日本汽船の所有だったころは庭も広くて、アラウカーヤとアラウカーナという雌雄の樹が二本植わってていて、いと伸びていたが、華僑に買いとられると庭の半分が削り取られてハーモニカ長屋が建ち、樹は取り払われてしまった。