27.旧ハッサム氏邸崖と領事舘宿舎（現存）

北野三本松の地蔵さんの上の通りを約三〇メートルばかり西行すると、右手にゆるい石段がある。そこを登った左にオバライン氏邸があり、その斜上にこの白塗のアメリカ領事館の宿舎がある。

今はペンキの塗りかえもしなくなった。これは二間か三間くらいの小さな女中部屋だったかもしれない。

路地の左側の石垣の上に台地がある。ここは相楽園に移築されたハッサム邸があったところだ。ハッサム邸が移築されたあとが空地になっていたが、その年大雨で空地に水が溜り、崖崩れがして、オバライン氏邸の女中部屋に崩れこんでたいへんな騒ぎになった。しかし、この異人館のなかにはなんの変化も起こらなかった。

ここは今も静かに静まり返ったままである。だが、いつのまにかこの家の鎧窓もなくなってしまい、窓が大きくなって、部屋が明るくなったように思われる。