24.フエル氏邸(現存)
この家は、もう十四、五年前には木造でペンキがはげ、鎧窓はこわれかけていた。ちょうど私が北野町を描きに行ってるときに足場が組まれ、やがてモルタルが張られようとしていた。
玄関は元は平らな三角だったようだ。変な格好の玄関になり、これも板張りかと思って見ていると、鎧窓は元どおりしっかりと補強してきちんと窓につけているではないか。
大した異人館ではないが、こうして昔通りに直して、ペンキを少く光らしてしまうのは止むを得ないことだと、同情的な目で見ていたことを覚えている。
うすい黄色に緑色の鎧窓であった。壁がモルタル張りになったので、鎧窓の色はパステルカラーの桃色。こんなにしっかりと昔通りに残してくれたと思えば、たまらなくうれしかった。惜しいのは煙突の火道穴を、コンクリートで潰してもよいから残して欲しかった。