神戸異人館今昔

22.オバライン氏邸(現存)

オバライン氏邸

この建物はドイツ銀行家オバライン氏邸である。門柱も扉もがっちりと作られている。家は南向きに二十四メートルくらいのバルコンがついており、冬でも好天気の日はストーブがいらないほどの暖かさだ。

左門柱の奥に見えるのが東向きの出窓である。この家は出窓が東に一つ、西に二つある。先日ここを通っていたら、最近主人のオバライン氏が亡くなられて、こんな広い家に奥さんと女中さんの二人暮らしで、とてもさびしがっていられるときいて、私もさびしく思ったことだった。

表側はまだいちおう掃除も行き届いているが、裏側に回ると荒れるに任せた庭は相当痛んでいるようだ。私が一年がかりで描いた時にあったリラの木も枯れてしまい、二十匹も餌っていたダックスフントの大きな犬小屋と運動場も荒れて痛いたしい。こどものない家のさびしさをしみじみと思ったことだった。