神戸異人館今昔

20.シュエケ氏邸(現存)

シュエケ氏邸

この家は山本通り三丁目で、北野町との町境、すなわちこの家の上側は北野町というところに建っている。非常にていねいに保存されているが、二つだけ残念なところがある。

それは、この絵の右手にあるアマサン部屋の付近の鎧窓が全部取り除けになったことと、右側の一階のところにモルタル張りの部屋が作られて、正面から見るとすっかり感じが変わってしまったことだ。

この建物は、神戸の異人館の大半を建てたハンセル氏の邸宅であり、いわば異人館の一つの、典型を示すものだった。裏側から見ると、柱にくりを入れ、とても凝(こ)っているが、ここも鎧窓はとられてしまっている。

住む人の生活の便利さからであろうが、こんな歴史的な建物を管理することは、為政当事者の責任であろう。毀(こわ)すことは易く、再建することはむつかしい。神戸の顔となっている異人館の保存について、真剣に考えてほしいと切に願うものである。