神戸異人館今昔

15.北野町・華僑陳氏の異人館(現存)

北野町・華僑陳氏の異人館

北野町交番西側を下ると、右手に二メートル半くらいの小径がある。右折してこの小径に入り、左側に煉瓦塀を見て過ぎると、すぐ山側にきれいな舶来瓦煉のフランス積瓦煉塀の家に出る。もうずいぶん年月を経ているのに、少しも傷んでいないのはさすがだ。この塀の隣りがガッチリとしたこの絵の異人館である。

ここは、もう少し道路が広かったならば、とても問題になる異人館である。裏から見るとがらっと変わるおもしろい異人館だ。この異人館の主人・陳氏には、画の話で応接室に案内されたことがあるが、二十畳敷もあろうかと思われる広さで、内部には見事な中国家具がいっぱい置かれ、小さな私など、座ると茶碗(ちゃわん)についた一粒の米粒くらいで、よほど肘(ひじ)を張らないと両肘掛に届かない有様だった。

中国螺鈿(らでん)の衝立(ついたて)は、玉や瑪瑙(めのう)や大理石など種々の色の石が使われていて、とても綺麗(きれい)であった。帰りのあいさつをして表に出ると、日本人には考えられないようなムードの玄関表だった。外から眺めた異人館の美しさを、なるほど!と、あらためて考えさせられたことだった。