神戸異人館今昔

18.山本通り小径・灰色の家(奥は現存、手前は取りこわし)

山本通り小径・灰色の家

ここは上の山本通り二丁目にあり、私の傑作の異人館のできた場所の一つで、とても好きで、タ方暗くなるまで描いたところである。

グラッシャニー邸の東側の路地を上り、上の山本通りを横切って、さらに下り、一の角を左に曲がった二軒目であった。

が、今はアパートの建物に変わってしまった。灰色の壁に薄いブルーグレイの鎧窓が二つついており、入口は赤い三角帽をつけた屋根で、とても好ましい建物だった。隣の庭から植木が延びて小径を覆い、色の調和が美しかった。人があまり通らないので、道にも緑の苔が生えていた。

ある日、夕方近くまで描いていた時だった。黒づくめの西洋婦人がやってきて、私の絵を見ながら「汚い…」と言った。私がおどろいてふりむくと、その婦人の友だちらしいロシア人が前の家から飛び出して来て、「あなたの絵のことじゃないですよ、その家の所有権で姉弟が争っていたのでそう言ったのよ」と言った。

今はアパートの建物に変わってしまった。s